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2006年07月18日

わたしの意見

文京区長 煙山 力殿
                    
慶應義塾大学文学部講師 川西 崇行
                   


都市計画変更(元町公園)に関する意見書

 標記について6月29日に元町公園に関する都市計画公園の変更案を縦覧いたしました。
 標記の公園は、旧東京市等にによる帝都復興事業によって設けられた貴重な復興小学校・復興小公園の一つであり、その後の行政組織の改編を経て特別区の管理に移ったもので、一にその利害関係人は地元地域住民(文京区民、学区域住民等)に限定されず、広く都民共有の財産であります。また、この時期(昭和戦前期)の学校・公園施設が原状を保っている点に於いても極めて貴重であり、その点に於いては、都民のみならず、国民共有の文化財的存在と言っても過言ではなく、その観点に立って、以下縦覧に対する意見を申し述べるものです。
 関係図書を縦覧したうえで、都市計画変更案(元町公園)に関して、以下の諸点について意見を申し述べますので、区関係部署並びに都市計画審議会で慎重に審議されることを求めます。

 変更案の骨子は、現存の小公園・元町公園(約0.35ha)を廃し、隣接する旧元町小学校跡地に新たに、ほぼ同一規模の街区公園・元町公園(約0.36ha)を設けること−すなわち、ほぼ同一規模・面積の公園を隣接地に置き換えるという主旨であると理解致しております。
 理由書には「誰もが利用しやすい地域に開かれた公園として整備し」とあって、既存の小公園・元町公園(以下、元町公園)は斜面地にあってバリアフリー・防災機能の付加等の観点から使い勝手が悪いため、隣接の平坦地(旧元町小学校敷地)に移設するという説明がなされておりますが、頭書・後記の通り、元町公園の歴史的な希少性等、その固有の価値を差し引いても、多大な公費を投じて同一規模の公園を隣地に移設するという計画は常識的には理解しがたく、理由書の別条に「区有地の有効活用と公共施設の適正配置を図ると」あること等から類推するに、斜面地に現存する元町公園を廃止後造成し、老朽化の問題が取り沙汰されている区立総合体育館(湯島四丁目)に代替する大規模施設を新設する等の建築計画が、本変更案の大前提にあることが半ば透けてみるものとなっております。
 しかしながら、本変更案では変更理由として「バリアフリー化等公園機能の改善」のみを明示し、「公共施設の適正配置」、すなわち、本変更案に連動していることが推察される区立総合体育館(湯島四丁目)の老朽化対応・移転新築についての言及に乏しいのは、都市計画審議会における審議の形骸化、区民への情報公開の真正さなどの諸点から誠に由々しき問題を生じるものと考えます。
 また、上に述べたスキームに従って、元町公園を廃した敷地に新たな大規模体育施設等を新築・移設した場合、休閑地となる現在の区立総合体育館敷地(湯島四丁目)の利用について、区がどのような転用・土地利用を企図しているのかという点についても大きな疑念を感じざるを得ません。
 区に於かれては「現在の元町公園が持っている、神田川沿いの緑の連携や歴史性については、プロポーザルの前提条件とし、可能な限り配慮するつもり」であるとの見解を持たれてると仄聞致しておりますが、敷地変更・大きな地形の改変を前提とした本変更案にあっては、如何なる設計を為すとも、その歴史性や景観的特徴を真に継承することは不可能であり、下記の諸々の事由により、旧元町小学校校舎および元町公園がほぼ創建当初の形態のままに保たれている原状を保全し、まちづくりの観点の上から重要な歴史的資源として積極的に利活用すべきであると考えます。
 また、区立総合体育館(湯島四丁目)の老朽化に伴う改築については、建築諸法令に照らして詳細かつ緻密な検討を重ね、様々な創意工夫を凝らしてもなお、現在地における改築が全く不可能であるとの判断に至った場合にのみ移転を検討し、仮に、相当の体育施設等を旧元町小学校敷地に移す場合にあっても、既存の旧元町小学校校舎の利活用・一部修改築など、極力、現状を維持すべきと考えます。

 区に於かれては、本意見書の他、広く市民の意見を反映するよう努め、また、都市計画審議会における慎重且つ公正な審議、ならびにその結果としての本変更案の抜本的な見直しを強く求めます。

(1)当該の元町公園および旧元町小学校は、歴史的に貴重な物件であり、まちづくりの上からも歴史的資源として極めて重要であるから、基本的には一体のものとして扱い、機能的な付加を為す等して現況の保存(利活用)が望ましい。

(2)環境・景観上も、神田川岸・本郷台地縁部の崖線に位置する貴重な緑地であって、現況のまま維持することが望ましい。

(3)本変更案は、文京区基本構想「『文の京』の明日を創る」の「歴史的遺産の価値に対する共通認識を醸成し、その保存と活用を図る」に違背し、また案件の重要さに比して区民への周知が十分とは言えず、広範かつ慎重な論議が必要である。

(4)区立総合体育館(湯島四丁目)の老朽化問題−体育館等大規模施設の新設については、諸法令に照らして一層の厳密な検討を経ての現地改築、あるいは別用地の検討など、別の方策を検討することが望ましい。

(5)区立総合体育館(湯島四丁目)の機能を当該の元町公園および旧元町小学校に移転せざるを得ない場合、既存建物を修改築するなどして極力、現況の佇まいを残し、(部材の保存やイメージ保存、レプリカ等ではなく)現況を保全することに努めるよう希望します。

以 上