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2006年08月04日

文化財保護審議会傍聴、行ってきました!

 ひとしお暑さが増し始めた朝のシビックセンターに、文京区文化財保護審議会の傍聴に行ってきました。委員の方々の発言も外の気温に負けず劣らず熱かったです。
 教育委員会からは諮問をするつもりはないので、文化財保護審議会での正式な審議とはならない、との脅し(?)にもかかわらず、懇談会を開いてでも元町公園と旧元町小学校の文化財的価値を検討すべきだ、とのご意見も出ていました。
 今回も正式な議事録が区によってまとめられるでしょうから、正確な内容はそちらをご覧下さい。まずは、ぱぱっと速報です。

2006年8月4日 文京区文化財保護審議会 午前10時~12時
       於:文京区シビックセンター20階教育委員会室

 今年度最初の審議会のようで、まずは委員の方々への委嘱状交付から始まった。
 続いて、型通りに教育推進部長挨拶、委員の方々と事務局の方々の自己紹介、会長と副会長の選出が行われる。
 本日の議題としては、ふるさと歴史館所蔵の「富士構」関係資料と日本女子大学の明治期の二棟の木造建築物に対する文京区文化財指定について、前者は報告、後者は諮問という形で話し合われた。

 報告事項のなかで、最初の案件は、区内在住の方が重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受けることになった、という話。内田委員(埼玉大学教授)の質問により、文京区ではそういう方が区内で活動なさっていることを的確には認識していなかったことが判明。今後は、まずは区報とケーブルテレビで紹介をしていくと回答。重ねて内田委員より、区を越えたところで貴重な人やものが、区内に存在しているということをきちんと調査把握して欲しいとの要望が出された。中村会長(神奈川大学教授)からも情報を集めて目配りをするよう諭される。関連して谷川委員(早稲田大学教授)から、港区で近世建物の悉皆調査を実施した際、予想よりも多くの物件が確認されたようで、文京区でも都の調査に協力をするなどといってないで区独自に調査をするぐらいのことでお願いしたい、との話。
 続いて、昨年度実績報告。どうやら今年度から「ふるさと歴史館」がアカデミー推進課に改組になったようで、今まで教育委員会で実施していた様々な事業がアカデミー推進課の担当に変わることになるようだ。今年度からは、文化財普及については「ふるさと歴史館」が中心に活動をする。例えば、今までの教育委員会による「史跡さんぽ」も「史跡めぐり」として内容がいろいろと変わってくるらしい。来年の2月には「文京まち再発見2」として比較的新しい建物も含めて文京の名建築を紹介する企画がある。

 最後に「その他」という項目のもとに、文京歴史的建物の活用を考える会(たてもの応援団)からの要望書が参考資料として委員に配布された。この要望書は先月26日の都市計画審議会の内容をうけ、元町公園と旧元町小学校の文化財的価値について、文京区文化財保護審議会で審議をしてもらえないか、というもの。まず、原口庶務課長から、この要望書を配布したのはあくまで参考資料であり、正式に審議をするには教育委員会からの諮問をする必要があること、体育館の建替えが急務であること、区政全体を見渡した中の判断で計画をすすめたいことなどが説明された。
 唐突な資料配布であったため、委員の方々の間でまずは情報を整理する必要があった。まず造園の専門の藤井委員(千葉大学教授)から説明がなされた。元町公園と旧元町小学校は震災復興の際、昭和のはじめにつくられたもので共に震災復興当時の状態が良く残されていること、特に元町公園は他には残されていない貴重な事例であること、20年ほど前に文京区も公園の復原工事をしており当時のメルクマールとしてしっかりと記録に留めようという意志があったこと、公園の特徴は神田川を見晴らす高台にあり、その地形をいかしていることが重要なポイントである、その傾斜地を活かしたカスケードなどもあり、デザイン的にも優れたものであることを説明。別な用途に変えることは大問題であり、文京区には壊さないことを希望する、と説明。続いて建築の専門の内田委員は、小学校も震災後の災害シェルターとしての機能を持たせた鉄筋コンクリート造のものであり、校庭と一緒に公園を利用するなどとてもよく考えられたもの、市民の新しい都市生活の拠点であったことを説明。当時のものがとてもよく残っているので個人的には残すことも重要であると思うと語った。その他写真資料などはないのか、との中村会長からの希望で文京区側が用意したのは、以前「ふるさと歴史館」で開かれた「文京まち再発見」のカタログ、見開き2ページの写真と図面だった。
 中村会長からの文化財保護審議会としては何ができるだろうか、との問いかけに、内田委員は、文化財的価値を判断することだろう、造園学会や建築学会からの要望書を資料として見せてもらいたいと発言。藤井委員からは都や国のレベルでも元町公園の文化財的価値を取り上げる動きがある、と示唆された。これに対し、原口課長は、教育委員会として正式に諮問をすることはできない、このように報告という形を取ったので意見を聞くことはできる、と述べる。
 副島委員(大正大学教授)から、文京区は要望書を受け取ってどのように回答をしたのか、との質問あり。まだ回答は出していないが、公益性と区からの計画が出ていることを考慮して、諮問はしない方針である、よって審議会の正式な議題にはならないと課長の回答。これをうけて谷川委員が、通常の審議会でも円滑に進めるために諮問の前に話題が提供されるのは普通のことであるとして、それよりも、今回のことでは、近代の庭園をどのように文京区が取り扱うのか、ということを問われているのだ、条令を楯にとって審議できないうんぬんではなく、文化財保護審議会委員による「懇談会」などの形をとって真剣に議論すべきものだ、と述べる。原口課長、通常は文化財指定の際は所有者からの依頼で検討をする、今回は文京区の所有でもあり、区全体の立場からは厳しい状況。区としてはプロポーザルの中で歴史性を考慮すると言う条件を入れるということで考えている。佐藤教育推進部長から、議論を封じてしまうような原口課長の言い方に誤解をして欲しくないとひとこと。町会からも歴史的経過などに配慮して欲しいといわれているので歴史性を継承するようにきちんと考えたい。
 内田委員からのコメントは、文化財的価値があるのであれば、そのことには少なくとも言及したい、どうしても壊す場合にはその壊し方や記録の残し方を検討すべきである。
 藤井委員は、移設を検討しているようだが、公園は地形や場所と切り離せないもの、移設を前提に話をするものではない、どこまでどういった体育館を建てるかなど、そこを含めてきちんと設計をするべきだ、区全体の状況を斟酌して考えるということは文化財保護審議会の存在意義にかかわるのでできない、行政の文化財担当としての事務局の方々も同じ立場のはずだ、との意見。
 中村会長から、計画についてということではなく、文化財保護の立場から文化財的価値を考える場である、もし審議がだめなら見識として出せるか。谷川委員、事務局との調整が必要そうだ。宮崎委員(東京大学教授)、文化財的価値の議論はするべき。
 内田委員と藤井委員から、少なくとも審議会の委員の方々に現地を見ていただくのはどうかとの話が出て、審議会後に日程調整をすることになった。中村会長から、文化財保護審議会がどうあろうと、計画は進むのですよね、との質問。(委員などから、8月末に次の都市計画審議会らしい、との話をうけて)事務局側から、まだ案として出されているだけのようだ、との回答。
 中村会長、区の文化財であることは確かなようだ、これからの文化遺産を考える上でも重要なことなので、共有財産としての情報にすることに意味があるだろう、審議会として何らかの回答を出さざるを得ないだろう、との発言でまとめとなる。

 (審議会後の日程調整で8月7日に有志の委員の方々が元町公園と旧元町小学校を視察することになったそうです。)

以上