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2007年03月06日

都市計画審議会直前!第16回景観審議会ぱぱっと解説

次回の都市計画審議会が迫ってまいりました。その予習復習を兼ねて、昨日の第16回景観審議会議事録をぱぱっと解説付きでお読みください。ちょっと長いですけど、目からウロコが落ちる人もいるかもしれません。

2007年1月22日 第16回文京区景観審議会 ぱぱっと解説(文京区発表議事録対応版)

[全体について]
 前半は、「第6回 文の京 都市景観賞表彰式」です。受賞なさった方々おめでとうございます。
ちょっと話はそれますが、応募をした人間のひとりとして、事務的な面についての感想です。
後日、文京区から参加賞がひそやかに送られてきました。まったく想像だにしていなかったもので面食らったのですが、こうした参加賞目当てに応募なさる方もそうはいるまいと思います。それなりの費用がかかるでしょうから、次回からは参加賞を廃止してその分を受賞なさった方々の顕彰のための費用に回したほうが有意義ではないかと思います。

 それはさておき、後半ですが、やはり例によって、文京区側のゴリ押し的な側面が前面にあぶりだされた感じです。都市計画審議会で景観審議会の意見を聞きたいとの話になったのだから、とあくまでも「ご意見」を伺うだけで、正式に諮問はするつもりはない様子。景観審議会で何がしかの意見を得たという事実が欲しいだけ、手続きとしての宿題は終わらせましたよという態度を示したいだけ、なのです。文化財保護審議会の中村会長のご意見を区に都合の良いように捻じ曲げて報告をするような今の区の立場では、景観審議会の「ご意見」をどのように扱うものやら知れたものではありません。

 島元委員と田中委員がその辺りの機微を突き、柳澤委員もそういう状況では意見は言えない、との流れをつくります。区側は景観審議会に意見を聞こうというにもかかわらず、先日実施された現況調査のなかの景観に関する情報さえも提示しないという粗雑さ。しかし、白石委員や野生司委員などから内容を説明してもらわないことには何ともわからないとの意見、西村会長もせっかく集まっているのだから話を聞いてみようということになります。

 ここからは今までの都市計画審議会でも行なわれていることの繰り返し。委員からの的確な質問と頑迷な区側の各幹事たちの迷答弁。
 A3一枚の「元町公園の都市計画変更に伴う建築計画について」に基づき、小野幹事が概要を説明。次いで徳田幹事から湯島の総合体育館は移設されなければならないといういつもの判で押したような説明。
 数名の委員から、小学校側に建物を建てる案は検討しているのか、との質問が出るが、区の今の提案を変えるつもりはないことを強調するばかり。
 元田委員より、この提案は合意形成ができていないようだ、この場で審議するには熟していないとの意見があり、まとめに入る。
 宿題として、湯島の総合体育館の前面道路の資料、建物ができた場合の風の問題、眺望の問題、文化財としての価値の問題などを知りたいとの意見あり。

 いつものようにまとめようがない中での、西村会長のまとめの意見・要望。次回は情報共有のために資料をまとめておいていただいて、きちんとした形でもう一回議論をさせていただきたい。
 これを、事務局の方々のためにわかりやすく書き直すと、形ばかりの資料ではなく、景観審議会としての積極的な議論ができるような情報ならびに資料をまとめて提示してもらいたい、その前提として、正式な議論ができるように諮問をしていただくなどの手続きを踏んでもらいたい、と仰っているのです。これも結局、次回で裏切られてしまうことになるのですが。

 詳しい内容をお読みになりたい方は次へどうぞ。

[詳細解説]

p.6までは景観賞関連なので、この部分の解説は割愛させていただきます。

p.7-8:島元委員からこの審議会は正式な答申に基づくものなのか?という質問がありましたが、小野参事は言を左右にしてなかなか返事をせず、最後にようやく、景観審議会の皆様のご意見をいただき、それを次回の都市計画審議会に報告する予定だ、と述べています。
 (ぱぱっと解説)これは正式な諮問ではないので審議内容はきちんと都市計画審議会に申し送られることはないが、景観審議会の皆様のご意見をいただいたという事実は最大限利用させていただきます、という意味になります。

p.9-11:景観審議会条例の手続きについての議論になっています。話題の第22条は以下の通り。

第22条 景観づくりに関する重要事項について調査し、又は審議するため、区長の附属機関として、文京区景観審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、区長の諮問に応じ、次の各号に掲げる事項について審議する。
一 景観基本計画の策定及び変更に関すること。
二 景観形成地区の指定に関すること。
三 景観重要物件の指定及び解除に関すること。
四 表彰及び支援に関すること。
五 第二十四条に規定する公表に関すること。
六 その他区長が景観づくりについて、必要があると認めた事項に関すること。
3 審議会は、前項に定めるもののほか、景観づくりに関し区長に意見を述べることができる。
(ぱぱっと解説)第2項の正式な諮問とするか、第3項の審議会の意見となるのかというあたりのせめぎあいです。島元委員と田中委員が危惧をなさっているのは、正式な諮問でなければ、景観審議会の意見を今までのようにいい加減に扱われてしまわないかということ。区側としては正式な諮問ではなく意見として出してもらって、好きなように取り扱いたいこと、といったところでしょうか。

p.14:齋藤委員からのご意見 
(ぱぱっと解説)既に先約の会議が入っていてこの回の景観審議会に出席できなかった齋藤委員は7ページにわたりかつ付録資料付の大部の意見書を審議会に託しました。読み上げて議事録に載せて欲しいとのご希望だったのですが、読み上げられる機会がなく、議事録には掲載されませんでした。内容は景観審議会でこの問題を取り上げる手続き上の位置づけの問題から、現状と計画を模型で検討するべき、審議会としての意見のまとめ方の難しさなど多岐にわたるもの。かつ元町公園が、東京の歴史的公園遺産としての希少性を持つこと、その設計が独特のものであることを踏まえて、公園と小学校の新しい魅力を持つ将来像を探るべきだ、と書いておられます。詳しくは、1月22日付けの当ブログに全文掲載をさせていただいていますので改めてご覧ください。

p.17-18:教育委員会が、元町公園問題をなぜ文化財保護審議会に諮問しないのか。
(ぱぱっと解説)理由のひとつ目として、区は元町公園が以下の条文に適合しないといっていますが、

文京区文化財保護条例
第2条この条例で「文化財」とは、次に掲げるものをいう。
六 名勝 庭園、橋りょうその他の名勝地で芸術上又は鑑賞上価値の高いもの

島元委員もこの後で指摘なさっているように、文化庁は2006年春、名勝としての公園の中で関東大震災の復興を契機として開設されたものへの注目を言明しています。本来は文京区としては文化庁の方針に従うべきでしょう。

理由のふたつ目として、区の方針を了承してきたことを挙げるのはまだ理解できます。が、それに続く区の検討結果に対する教育委員会の判断に関する部分は支離滅裂。まず文化財保護審議委員の皆様は区の検討結果を認めずに保存要望書を出しておられます。文化庁の意見というのも曖昧な表現ですが、おそらく公園の地割に配慮する工夫、前面の左右対称性を維持すること、小学校の壁面をいかすことなどの意見をいただいているという内容だと思われます。この内容については区の検討結果にはまったく反映されていない(地割は改変している、左右対称ではない、小学校の壁はいかされていない)としか言いようがなく、区が何を踏まえ、何をもって歴史的な継承を図っているかという根拠がまったく理解できません。その上、元町公園の残存物を登録文化財にだけはしたいという手前勝手な主張をしているだけです。

p.19:西郷委員「齋藤先生が‥‥わけていただいて‥‥」
(ぱぱっと解説)今回は元町公園に関する意見を聞いて(2)、次回できちんと手続きを踏めば(1)よいのではないか、ということです。

p.21:小野参事「左右対称の構成は遵守する」
(ぱぱっと解説)区の検討案で区域Bと呼んでいる場所は一度取り壊して復元をすると言っています。ただし、地盤面を上げる予定だそうで、この時点で左右対称ではなくなります。同じく地割に関しても変更してしまうということになります。

p.21-22:小野参事「‥‥通常、出入り口を設けて、そこで使う通路については、自分の建築敷地の中で処理するというのが原則でございますけれども、例えば、その通路部分を公園部分を利用して処理するということも可能にすると。それによって仮想ですが、建築敷地が一部北側に伸びたような形、それの計画も許容していこうということで、新設公園の一部分を建築計画のオープンスペースの一部とすることができるというのはそういう意味でございます。‥‥」
(ぱぱっと解説)これは、とんでもない発言です。隣接する公園を建築敷地に組み込むことができる、つまりその部分は公園ではなくなるということを平気で言っておられる。このようなことがまかり通れば、今後、文京区内の各所公園の横で
建物を建てようとしている誰もがその公園を敷地に取り込んでしまうでしょう。だって「新元町公園」で実績があるのだから、区の立場としてはそれに反する指導(実質は命令)はできないだろうから。

p.22-23:徳田課長「湯島では、東京都建築安全条例に抵触している関係で体育館が建ちません。」
(ぱぱっと解説)東京都建築安全条例第4条の規定により、建物の延床面積が3,000?以上かつ建築物の高さが15mを超える場合には、その敷地は幅員6m以上の道路に長さ10m以上接していなければならない、とされています。ただし、この規定は建築物の周囲の空地の状況とその他の土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合においては、適用しない。ということで、空地などを工夫して安全性を考慮すれば可能性はあるということです。もう一点、第10条の2、ほぼ同様で、「体育館」の敷地は、幅員6m以上の道路に接し、かつ、当該道路に面して当該敷地の自動車の出入口を設けなければならない。これも前掲条文と同じく知事が安全上支障がないと認めれば、その限りではないそうです。つまりは区の担当者にやる気と能力がなければ都知事の認可をもらえないということなのだとすると、徳田氏が言っているのはそういうことか?

p.28:徳田課長「東洋文庫とのやりとり」
(ぱぱっと解説)2004年10月28日に区長、教育長、幹部職員をメンバーとした政策調整会議が行なわれたようです。そのときの議題のひとつが「校地拡張に伴う諸課題について」。東洋文庫が移転先を探している、東洋文庫に隣接する昭和小学校の校地を拡張したい、総合体育館の機能を移転、東洋文庫との換地など、今後、検討を行なうことを了承する。2004年の時点で秘密裏にそんなことを画策していたなんて、今更、口が裂けてもいえないですよね。

p.29:小野参事「10階前後程度の建物にはなってくるのかな‥‥」
(ぱぱっと解説)これだけの空地を建物の周囲に取る場合には、通常は容積率の緩和も受けられます。話を単純にすると1.5倍の面積を建てることができる可能性があるということ。少なくとも1.5倍の15階建てにはなるということです。

p.33:小野参事「知事同意はとっているんです」
(ぱぱっと解説)現行の制度では都市計画変更をしようとする際には、事前に東京都知事の同意を取らなければならないのです。少々変な制度であることはひとまず置いておいて、それにしても、縦覧の際の意見書の75通全てが反対であ
り、これだけ地元をはじめ様々な学術団体や識者からの保存要望が出ているのにもかかわらず、自分たち(区)の立案のまずさを棚に上げて、いまだに「都知事の同意」を引っ張り出すとは、都知事もいい迷惑ですよね。

p.35:小野参事「容積が目いっぱいいらないところであれば、」
(ぱぱっと解説)冗談ではありません。相手は民間の共同事業者です。区と一
緒に遊んでいる余裕はありません。数十億では済まない資金を出す事業であるからには目いっぱい使える限りの面積を有効利用するのが当然です。小野さん夢物語はいけません。下手をすると嘘になりますよ。

p.36:松田部長「トヨタビルがそうなんですけれども」
(ぱぱっと解説)この話題は他の審議会などでも持ち出されています。小石川後楽園の南側にある外堀通り沿いのトヨタのビルのことだと思います。ただ、この話を伺うまでは普通のガラス張りのビルだと思ってました。ガラスに南からの日光が反射して向こう側など見えなかったですから。最近ようやく意識をして向こう側が透けて見えるようになりました。人間、知識と努力で世の中を見る目が変わってきます。

p.38-41:西村会長のまとめ
(ぱぱっと解説)これを読んでおられる行政のご担当者の方々へ。西村先生のまとめを注意深く繰り返しお読みください。せっかく日本で初めてのことをやりましょう、と呼びかけていただいているのです。ただ「文化財」を破壊した担当者として記録が残るよりも、日本で初めての事業を成功させた行政担当者としてきちんとした仕事をして名を残しませんか。