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お知らせ

下田旧南豆製氷所についての希望

2012年11月21日

下田旧南豆製氷所についての希望

下田市長様
下田市教育長様
下田市議会議長様

私たちNPO地域再創生プログラムは、以下の三つを現今の下田旧南豆製氷所の事情に関連して希望いたします。
■ 旧南豆製氷所を解体される前に「下田まち遺産」として指定されること。
■ 市が予定されている旧南豆製氷所の調査を多くの専門家の参加に門戸を開くことで成果を共有すること
■ 今回、解体前調査として旧南豆製氷所に対して行われるものと同様のものを今後、その他の「下田まち遺産」に対して順次行い続け、その成果を市民と共有していくこと。
 私たちNPO地域再創生プログラムは、2004年の設立年度に初めてこちら下田のまちを視察調査させていただいて以来、そこに発見されたまちの実力ともいうべき、数々の魅力に惹かれ、下田の市民とご一緒しながらいくつかの活動を行ってまいりました。
 その中でも、この旧南豆製氷所については、視察調査で初めて発見して、その空間の面白さ、豊かさに驚き、当時の所有者であった商業協同組合にご相談をして、2005年3月19日に内部の公開アートプログラムと討論会を行ったことが、その後の市民活動との連携や、景観行政へのご協力につながっていったこともあって、忘れることのできない関わりとなっています。
 今回、現所有者の解体への意向が公になりそれに関連して、下田のまちづくり行政へ深く関心を持つ者として、希望を述べさせていただきます。

 この旧南豆製氷所に関しては、
・伊豆急下田駅、また国道から下田旧市街へのゲートに当たる重要な位置であり、
・そこに下田の市民の産業の記憶としてのこの旧製氷所があることの価値は「まちの顔」の存在として大変に大きいとおもいます。
・また80数年前に、下田市民の有志がお金を出し合って作ったという由来は、コミュニティのルーツのエピソードとして非常にすばらしいとおもいます。
・そして、建築的に見ると、今は採掘されていない伊豆石の組積で作られた建築としては、もう二度と作れない規模の建造物としての希少性があります。
 
 そして、これはわれわれの活動以降の4年ほどの公開期間に、この場所を舞台に展開された、市民によるまちの元気をつくる活動のよりどころとなる場所としての価値と、案内された市外からの人たち、特に多くのアーティストがこの空間に対して一様に感銘を受け、また何かをここでやってみたいという言葉を発していったことは、この建物と下田の魅力、価値を示す一端ではないでしょうか。

 しかし一方でこの現況は、保存活用へ向けていろいろな試みが行われた結果としての今回の解体表明であり、現所有者のここまでの負担と心情を考えると、一概に否定はできないものがあります。残るか、残らないかの対立が、勝ち負けとして、建物の所有者と利用者(保存希望者)のどちらかに傷を残すということをわれわれは望みません。
 
 では、どういう方向へわれわれが希望を持ちたいと考えているか。

 ひとつは、この建物と人とのかかわりの記憶をきちんと後の人が受け継ぐ機会をつくることです。その中のひとつとして、これまでは所有者への配慮意識のためでしょうが、この建物は「下田まち遺産」に指定されておりませんでした。現存するうちにできれば市として指定をしていただき、そのこととこの建物を市民に再度認識していただくイベントを開く機会があればと希望します。

 もうひとつは、これからのことです。「まち遺産」やその他まだまだ市内に使われている、歴史の価値ある建造物や場所についても、今後同様な「惜しくも壊されることが決まりました」という状況はやってくるでしょう。しかしその最後とは、急にやってくるものではなく、むしろ所有されている時間の中で、少しずつ苦しさが蓄積してきたものが一線を越えるのだと認識しています。その間、所有者が協力を求める相手が見つからないためにあきらめるケースもあろうかと思います。
 できれば、そういった崖縁に到達する前に、多くの人が手を差し伸べられるようにしたい。そう考えております。そのためには、それぞれの「まち遺産」の現況、何が問題になっているのかがわからないとなりません。
 今回は解体を前提に行われる「調査」を、今後は毎年数を決めて定常的に行い、それぞれの「まち遺産」の健康診断として、それぞれの建物のカルテを市が把握しているような状態になることを希望したいと思います。
 このカルテの存在によって、下田市は自らの持っている「まち遺産」の資産価値を把握し、それが滅失しないように予定を立てることができます。また市だけでなく、今回の旧南豆製氷所の4年間のように、市内市外の市民の協力による支援のネットワークとしても機能させることができるかもしれません。
 私たちがひきつけられた、下田のまち、「まち遺産」に歩いて出会えるまちの魅力が未来に引き継がれていくために、これらの件について市、教育委員会、議会にてご一考いただけるよう、希望いたします。

2012年11月15日 NPO地域再創生プログラム 


Written by Shinbori
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